南総里見八犬伝について

f:id:anzudou:20210313095308j:plain日本の近世女性史研究家関民子著「江戸後期の女性たち」を読んでいたら、南総里見八犬伝についての女性史的視点の解説がありました。この本は興味深い内容が盛り沢山なのですが、古語文が原文のまま紹介されていてそこの現代文訳がないので熟読できないのが残念でした。それはともかく、南総里見八犬伝といえば真っ先に思い出すのは、当時大ファンだった真田広之と若かりし薬師丸ひろ子主演の映画です。ラブロマンス調の娯楽作品で映画館まで見に行き胸を熱くした時が甦りました。あえてネット検索せずに記憶のなかにあるのは洋楽のテーマソングとこわーい船虫の顔です。曲名や歌手名はわからないけど、メロディーはくっきりと覚えています。

さて、話を戻して解説によると、南総里見八犬伝は1841年に滝沢馬琴が28年かけて書き上げた小説です。滝沢馬琴といえば教科書に太字で掲載されている人物ですよね。映画を見た当時はなにも予備知識はなく、今でもよく覚えていているのは、ビー玉みたいな目玉のこわーい船虫という名の老婆の顔です。
解説によると、この物語には二人の悪女が登場し、そのうちの一人が船虫でその悪女っぷりたるや、4度夫を変えながら盗み殺人等の悪業を尽くし、何度か捕らえられながらもそのたびに逃げ出すというものです。解説によるとその悪業は、当時の幕藩体制社会に流布されていた儒教倫理を逆用したものだという。つまり、女を抑圧する家父長制社会への無意識的な復讐と告発となっている、というのです。作者は男性の滝沢馬琴なので、小説のなかでどのように意図して書かれたのかは研究者におまかせするとしても、江戸後期の世が大地からの不穏なゆらぎに動揺しはじめていたことが感じられる。
個人的には、江戸時代から明治時代にかけて構築された社会の負の側面が現在にも見えにくい形で存在している、と考えています。
そんなことを日々気付いていけるよう独学は続けていこうと思います。